全国の地価上昇が5年目に入る
国土交通省が9月に公表した2026年都道府県地価調査では、全国の全用途平均、住宅地、商業地がいずれも5年連続で上昇した。調査の価格時点は7月1日で、対象は全国21,466地点。全国平均の前年比変動率は住宅地1.0%、商業地2.9%、工業地3.3%となった。商業地の上昇幅は前年から拡大しており、住宅地とは異なる価格形成が進んでいる。
地価上昇の背景には、都市部への需要集中、商業活動、観光関連需要、企業の設備投資などがある。ただし、全国平均の上昇をすべての地域や物件に当てはめることはできない。地価調査は土地の価格を示す指標であり、中古マンションや収益ビルの成約価格そのものではない点にも注意が必要だ。
東京圏と大阪圏で商業地の伸びが目立つ
東京圏では住宅地が4.0%、商業地が8.9%上昇した。大阪圏でも住宅地2.3%、商業地6.8%と上昇が続く。一方、名古屋圏は住宅地1.5%、商業地2.7%、三大都市圏以外の地方圏は住宅地0.1%、商業地0.9%となった。
この差は、不動産投資の収益機会が地域ごとに異なることを示している。東京の主要商業地では立地の希少性や事業需要が価格に反映されやすい一方、地方の住宅地では人口動態や雇用環境による影響が大きい。商業地の価格上昇率が高いことは、必ずしも賃貸収益率が高いことを意味しない。
金利上昇が不動産価格に与える影響
日銀は9月18日に短期政策金利を1.25%へ引き上げた。国内金利の上昇は、住宅ローンや不動産投資融資の条件を通じて購入可能額と投資採算に影響する。とりわけ借入比率の高い収益物件では、金利上昇によって賃料収入から支払利息を差し引いた手残りが縮小する可能性がある。
地価が上昇する局面では、物件の売却価格に期待が集まりやすい。しかし、賃料が価格上昇に追いつかなければ取得利回りは低下する。建築費や修繕費の上昇も加わるため、価格上昇率だけを投資判断の中心に置くことは適切ではない。
海外投資家への意味
円安は海外投資家の取得コストを外貨換算で抑えるが、東京圏の地価上昇はその効果を部分的に相殺する。海外投資家は為替上の割安感と、不動産そのものの価格妥当性を別々に検証する必要がある。
今後の焦点は、地価上昇が実際の賃料成長を伴うかどうかに移る。人口流入、空室率、成約賃料、融資金利、修繕積立金、建物の管理状況を確認し、売却時の価格調整も想定した投資分析が求められる。2026年の地価調査は市場全体の上昇を示したが、個別資産の収益性まで保証するものではない。