2026年9月26日時点のJCBO Japan Investment Timing Indexは55となった。構成指数は為替取得環境56、不動産価値・収益68、出口・マクロ42であり、40%、30%、30%の加重平均を四捨五入して算出した。算式は56×0.40+68×0.30+42×0.30=55.4、総合指数55である。信頼度は77。各構成指数と信頼度はJCBOの分析評価値であり、公的機関が公表する指数ではない。指数は将来の価格上昇率や投資収益率を予測する数値ではなく、取得時点の条件を比較するための指標として位置付ける。
為替市場では、9月25日のUSD/JPYが158.36円、CNY/JPYが23.5891円となった。9月18日のUSD/JPYは156.89円であり、週間では円安方向に動いた。中国人民元についても、9月18日から25日までの比較では円に対して強含んだ。USD/CNYは両通貨の対円レートから算出した参考クロスレートで約6.7133元。これは独立した人民元直物市場の終値ではなく、各市場の価格形成時刻の差を含むため、実際の送金や為替予約の約定レートとは区別する必要がある。
円安は海外投資家にとって日本不動産の取得価格を外貨換算で引き下げる。例えば円建て価格が変わらない場合、円安が進めば必要なドルや人民元は少なくなる。ただし、円安そのものが物件の賃貸収益を改善するわけではない。取得後の家賃収入が円建てである以上、外貨ベースの投資収益は保有期間中の為替に左右される。海外投資家が取得時の為替だけを根拠に判断すると、出口時に円安がさらに進んだ場合、円建て売却益が外貨換算で縮小する可能性がある。
金融政策では、日本銀行が9月18日の金融政策決定会合で政策金利を1.25%へ引き上げた。米連邦準備制度理事会も9月16日に政策金利の誘導目標を0.25ポイント引き上げ、3.75〜4.00%とした。日米の政策金利差はなお大きいが、両国が同じ方向に金利を動かしているため、為替を単純な金利差だけで説明することは難しい。米国ではインフレとエネルギー価格、国内需要が金融政策の重要な判断材料となっている。日本では物価、賃金、国債市場の需給と金融機関の貸出条件が不動産投資環境を左右する。
9月25日の日本10年国債利回りは3.099%となった。これは不動産投資において重要な変化である。長期金利は金融機関の資金調達コスト、投資家の要求収益率、将来キャッシュフローの現在価値に影響する。金利が上昇すると、同じ純営業収益を生む不動産でも、投資家が要求する利回りが高まれば評価額は低下する。特に価格が上昇し、取得利回りが低くなった物件ほど、将来の賃料成長によって金利上昇を吸収できるかが重要となる。
不動産市場そのものは、現時点で一律に需要が弱まっているわけではない。CBREによる2026年第2四半期の日本事業用不動産投資額は1兆1,210億円で、前年同期比17%増加した。第2四半期としては金融危機前の2008年以来初めて1兆円を超えた。第1四半期も2兆430億円と同四半期として過去最大を記録し、海外投資家による1,000億円超の大型取得が確認された。もっとも、第2四半期の投資額増加は国内投資家による大型取引の寄与が大きく、海外投資家の需要がすべての物件種別で同じ強さを保っていることを意味しない。
収益面では、東京都心のオフィス市場に賃料成長がみられる。CBREの2026年第2四半期調査では、東京の全グレードのオフィス空室率が1.4%となり、前期から0.1ポイント低下した。グレードAとAマイナスの賃料はそれぞれ前期比4.3%、4.7%上昇した。企業の拡張移転やオフィス環境改善の需要が、供給の限られた立地で賃料を押し上げている。ただし、この数値を住宅や地方都市の賃貸市場にそのまま当てはめることはできない。住宅については人口動態、世帯形成、駅からの距離、築年数、管理状態によって需要と賃料改定余地が異なる。
価格評価の焦点は、金利と不動産利回りの関係にある。CBREの2026年第2四半期調査では、東京・大手町のプライムオフィス期待NOI利回りは3.10%となり、前期から5ベーシスポイント低下した。東京主要5区のホテル期待NOI利回りも4.15%へ低下した。これらは実際の個別売買利回りではなく、投資家アンケートによる期待値である。東京プライムオフィスの期待利回り3.10%と9月25日の10年国債利回り3.099%を単純比較すると差は約0.001ポイントとなる。ただし、両者は観測時点が異なり、国債と不動産ではリスク、費用、賃料成長期待も異なるため、この差だけで適正価格を断定することはできない。
中国からの投資資金については、人民元の対ドル動向と中国国内の金融環境を分けて考える必要がある。中国の9月の1年物LPRは3.00%、5年物LPRは3.50%に据え置かれた。中国国内では不動産部門や地方政府関連の信用需要の弱さが残り、金融緩和の余地と人民元の安定を両立させる政策判断が求められている。9月21日には人民元が対ドルで約3年半ぶりの高値圏に達したが、その後の持続的な上昇が保証されたわけではない。日本不動産を検討する中国投資家は、人民元から円への交換条件だけでなく、資金移動の適法性、金融機関の確認手続、取得後の円建て資金需要を個別に確認する必要がある。
国内不動産の価格基調については、国土交通省が9月15日に公表した2026年都道府県地価調査が重要な材料となる。全国の全用途平均、住宅地、商業地はいずれも5年連続で上昇した。東京圏と大阪圏では地価上昇幅が拡大している。ただし、地価調査は7月1日時点の土地価格を示すものであり、9月末の中古マンション成約価格や個別収益物件の売買価格を直接示すものではない。土地価格の上昇と投資利回りの低下が同時に進む市場では、取得価格に対する将来収益の検証が欠かせない。
3〜5年の出口を考える場合、取得時の円安が将来も継続するという前提は置くべきではない。例えば年間NOIが300万円の物件を期待利回り4%で評価すると7,500万円となる。同じNOIで期待利回りが5%へ上昇すれば評価額は6,000万円となり、理論上の価格差は20%に達する。これは市場価格の予測ではなく、利回り変化に対する価格感応度を示す計算例である。実際の売却価格は立地、築年数、修繕履歴、融資条件、買主の属性、賃料改定実績によって変わる。
海外投資家にとっての実務的な論点は、取得価格、実質賃貸収益、為替、出口流動性を一体で評価することである。東京都心の駅近住宅や賃貸需要が安定した中古マンションは比較対象となる一方、表面利回りが高くても管理費、修繕積立金、空室、設備更新、売却費用が大きい物件では外貨換算後の収益が低下する。今後は10月29〜30日の日銀会合、米国の金融政策、中国人民銀行の人民元運営、東京の賃料・空室率、2027年末に向けた期待利回りの変化を継続的に確認する必要がある。指数55が示すのは、為替だけで取得時期を判断する市場から、収益力と出口条件を選別する市場への移行である。