出口価格は取得時の想定だけでは決まらない
日本不動産に投資する海外投資家にとって、出口戦略は購入時から設計すべき重要な要素である。2026年9月、日本銀行は追加利上げを実施し、国内の資金調達環境は変化している。CBREの第2四半期調査では東京のプライムオフィスとホテルの期待NOI利回りが過去最低となった一方、将来の利回り上昇を見込む回答者の割合が増加した。現在の取得価格や利回りが、数年後の売却市場でも維持されるとは限らない。
金利とNOIから売却価格を考える
収益不動産の理論価格を考える基本的な方法は、年間純営業収益(NOI)を市場の要求利回りで割ることである。例えば年間NOIが300万円、要求利回りが4%なら理論価格は7,500万円となる。同じNOIで要求利回りが5%に上昇すると、理論価格は6,000万円となる。これは説明用の仮定計算であり、実際の市場価格を示すものではない。賃料成長、建物状態、土地価値、買主の資金調達能力などによって成約価格は変化する。
海外投資家には為替という追加変数がある
円建ての売却価格が上昇しても、投資家の本国通貨に換算した利益が増えるとは限らない。取得時と売却時の為替水準が異なれば、同じ円建て利益でも外貨換算収益は変化する。特にドルや人民元などで投資成果を評価する場合、円建てキャッシュフローと本国通貨建てキャッシュフローを分けて管理することが重要である。為替ヘッジを行う場合には、その費用と期間も考慮する必要がある。
非居住者売却に伴う10.21%の源泉徴収
国税庁の2026年4月1日現在の案内によると、非居住者や外国法人から日本国内の土地・建物等を購入する者は、原則として譲渡対価の10.21%を源泉徴収する必要がある。ただし、譲渡対価が1億円以下で、個人が自己または親族の居住用として購入する場合には、源泉徴収が不要となる例外がある。法人による購入では、この居住用個人の例外は適用されない。
源泉徴収額と最終税額は異なる
例えば売却代金が5,000万円で、10.21%の源泉徴収が必要な場合、源泉徴収額は510万5,000円となる。売主が決済時に受け取る金額は、その他の費用控除前で4,489万5,000円となる。ただし、源泉徴収は売却益に対する最終税額そのものではない。取得費や譲渡費用等を踏まえて確定申告を行い、必要に応じて税額の精算や還付を受けることになる。非居住者が確定申告を行う場合には、納税管理人の選任についても確認が必要である。
売却可能性を高める事前準備
出口戦略では、価格だけでなく、登記名義人の住所、本人確認資料、登記識別情報、共有持分、賃貸借契約、管理費等の未払状況を事前に整理することが重要となる。海外居住者の場合、必要書類の取得や本人確認に時間を要することがある。売却時期が決まってから準備を始めるのではなく、保有期間中に資料を更新しておくことで、買主の融資審査や決済日程に対応しやすくなる。
出口戦略の基本
海外投資家は、円建て売却価格、外貨換算収益、源泉徴収後の決済時手取り額、確定申告後の最終収益を分けて計算する必要がある。売却時の要求利回り上昇、円安、修繕費増加などを組み合わせた複数のシナリオを準備することが、取得時の想定と実際の投資成果の乖離を把握するうえで有効となる。