総合評価2026-09-11T16:08:00+09:00

円高・金利上昇局面でも東京不動産の収益力は維持―2026年9月、日本投資の判断軸は「為替」から「NOIと出口」へ

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JCBO INDEX62
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2026年9月11日時点の日本不動産投資環境は、為替・金利と不動産ファンダメンタルズが逆方向に動く局面に入っている。海外投資家にとって最も大きな変化は円相場である。Reutersによれば、アジア時間のドル円は154.105円となり、円は週ベースで2週連続の上昇方向にある。9月初旬には7カ月ぶりの円高水準を記録しており、1ドル160円台を前提に形成されていた日本資産の為替ディスカウントは明確に縮小した。

ただし、154円という水準だけを見て日本不動産の海外投資妙味が消えたと判断するのは早い。日本の投資環境を左右する第二の要因である不動産収益が、金利上昇を上回る速度で改善しているためだ。CBREによると2026年Q2の東京オフィスのオールグレード空室率は1.4%、主要5区は1.0%。Grade Aでは0.6%まで低下している。空室が極めて少ないため、企業の拡張移転やグレードアップ需要が賃料へ直接反映されている。Grade Aの想定成約賃料は45,100円/坪で前期比4.3%、前年同期比17.3%上昇。オールグレードでも前年同期比11.7%の上昇となった。

この賃料上昇が現在の東京不動産市場を理解する最大のポイントである。不動産価格は一般に将来NOIを要求利回りで割り引いて評価される。金利が上昇すれば要求利回りも上がり、同じNOIなら価格には下落圧力が生じる。しかしNOI自体が10%前後伸びる市場では、金利上昇による評価減を収益成長が吸収できる。この構造が、国債利回り上昇にもかかわらず東京のプライム資産価格が崩れていない理由である。

一方、金利面の警戒は明確に強まっている。9月11日の世界的な債券売りの中で日本10年国債利回りは約2.97%まで上昇した。米10年国債も4.957%まで上昇し、5%が視野に入っている。背景には中東情勢の悪化と100ドルを超える原油価格がある。エネルギー価格が高止まりすれば、日本では輸入物価の上昇を通じて企業物価、消費者物価、賃金要求へ波及し、日銀が金融正常化を続ける理由になる。

市場では日銀が翌週の会合で25bp利上げし、政策金利を1.25%へ引き上げるとの見方が強い。これは日本の不動産市場にとって重要な転換点である。長期間、ゼロ金利・超低金利を前提としてきた日本の投資家は、今後は負債コスト上昇を前提に取得価格を計算する必要がある。特に表面利回り2~3%台の物件、変動金利比率が高い案件、賃料増額余地の乏しい築古資産は、金利正常化の影響を受けやすい。

米国でも同じ方向のリスクが生じている。FRBは7月29日に政策金利を3.50~3.75%で据え置いたが、9月15~16日に次回FOMCを予定している。Reutersによれば9月11日時点で市場は25bp利上げの可能性を約7割織り込んでいた。米金利上昇はドルを支える一方、世界の不動産・株式に対する割引率を上昇させるため、日本不動産にも間接的な評価圧力を及ぼす。

それでも日本の実物不動産への資金流入は弱くない。CBREによると、2026年Q2の国内事業用不動産投資額は1兆1,210億円で前年同期比17%増となり、第2四半期として金融危機後初めて1兆円を上回った。オフィス・物流などで大型案件が成立しており、市場の流動性そのものは高い。東京のプライムオフィスとホテルでは期待NOI利回りが過去最低を更新しており、買い手が高品質資産に対して依然強い価格を提示していることを示す。

ただし、今後は「東京なら何でも上がる」という相場ではない。CBREの調査でも2027年末までに期待利回りが上昇するとみる市場参加者が増えている。金利が上昇する一方、賃料増額が可能な物件と不可能な物件の差が拡大するため、立地、築年、テナント構成、契約更新時期、土地比率、再開発、管理状態が価格差へ直接反映される。

海外投資家、とりわけ中国・香港・シンガポール圏の投資家にとっては、為替の考え方も変える必要がある。人民元は2026年夏に対ドルで3年半ぶりの高値圏へ上昇し、8月には約0.49%上昇した。一方、中国国内では銀行融資の伸びが歴史的な低水準へ鈍化しており、内需も弱い。中国政府は財政支援を強化し、金融政策も「適度に緩和的」としているが、資金需要の弱さは残る。国内投資機会への不透明感が続けば、日本を含む海外実物資産への分散需要は中長期的には維持される可能性が高い。ただし中国の資本移動規制は別問題であり、投資需要と実際の送金能力を混同してはならない。

3~5年の出口環境を見る場合、最も重要なのは購入時の円相場ではない。出口価格を決めるのは、保有期間中にNOIをどこまで伸ばせるか、売却時点の金利とキャップレートがどの水準にあるか、そしてその物件を買える投資家が何人存在するかである。例えば賃料を15~20%引き上げられる都心物件であれば、出口キャップレートが50bp上昇しても一定程度吸収できる。一方、NOIが固定された低利回り物件では、50bpの利回り上昇だけで資産価値が大きく低下する可能性がある。

JCBO Japan Investment Timing Indexは本日62と判定する。為替エントリーは67。154円台まで円高が進んだためピーク時ほどの割安感はないが、海外投資家から見れば依然歴史的には円の購買力が低い。Property Value & Incomeは62。価格水準そのものは高いが、東京の強い賃料成長と低空室率が支える。Exit & Macroは54。3~5年の需要基盤は維持される一方、日米金利、原油、地政学、キャップレート正常化の不確実性が高まった。

したがって現在は、購入を全面的に停止する局面でも、円安だけを理由に急いで買う局面でもない。東京23区の駅近住宅、供給制約の強いオフィス、インバウンド需要を取り込めるホテル・商業、土地価値の高い都心物件など、NOI成長と出口流動性の双方を確認できる資産を選別する局面である。今後の最大の確認点は、日銀とFRBの9月会合後に国債利回りがどこで安定するか、そして金利上昇下でも東京賃料の上昇が続くかである。

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