円を動かす二つの金利と原油
9月11日の外国為替市場は、従来の「米金利上昇=ドル高・円安」という単純な構図では捉えにくくなっている。米国では8月の生産者物価指数が前月比0.4%上昇し、最終需要物価は前年比5.4%上昇した。中東情勢を背景に原油価格が100ドルを大きく上回る局面となり、米10年国債利回りは5%近辺まで上昇した。一方、日本では日銀が翌週の金融政策決定会合で政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げるとの観測が強い。つまり日米双方の金利に上昇圧力がかかっている。
円安修正を支える日本側の材料
日銀は7月の展望レポートで、2026年度の生鮮食品を除く消費者物価上昇率を2.5%、2027年度を2.4%と見込み、経済・物価情勢に応じて政策金利を引き上げる方針を明示した。さらに日本の4~6月期実質GDPは改定値で前期比0.4%増、年率1.4%増となり、景気後退を理由に利上げを見送る必要性は低下している。7月の実質賃金も前年比プラスとなり、賃金と物価の循環を重視する日銀には追加正常化を進めやすい環境である。
それでも一方向の円高とは限らない
最大の反対材料はエネルギー価格である。原油高は日本にとって輸入額の増加を通じて交易条件を悪化させ、円のファンダメンタルズにはマイナスとなる。同時に米国でもインフレを押し上げ、Fedの利上げ観測と米長期金利を上昇させるため、ドルを支える。したがって日銀が利上げしても、Fedが同時に引き締め方向へ戻れば日米金利差の縮小幅は限定される。
日本不動産投資への意味
海外投資家にとって重要なのは、物件価格と為替を別々に判断しないことである。円安局面では外貨建て取得価格が低下するが、日銀正常化が進めば国内融資の調達コストは上昇する。一方、購入後に円高が進めば外貨換算した資産価値と賃料収入は増える。このため現在の市場は、円安を待って一点買いするより、取得時為替、借入金利、保有期間中の賃料成長、売却時為替を一つの投資収益率として評価すべき局面である。
次の焦点
最大のイベントは翌週の日銀とFedの政策判断である。日銀については25bpの利上げそのもの以上に、その後1.5%、さらにその先まで正常化する意思が示されるかが重要となる。米国では原油高が一時的な供給ショックなのか、基調インフレへ波及するのかが焦点だ。為替市場は当面、日米の政策金利だけでなく、原油、長期金利、政府の為替介入姿勢を同時に織り込む高ボラティリティ局面が続く可能性が高い。