購入時より出口条件の設定が難しくなっている
2026年9月の日本不動産市場では、物件価格を支える賃料上昇と、価格を抑える金利上昇が同時に進んでいる。CBREの調査では東京プライムオフィスの期待NOI利回りは3.10%まで低下しており、商業用不動産投資額も高水準にある。一方、世界債券市場では米10年国債利回りが5%近辺まで上昇し、日本の長期金利にも上昇圧力がかかっている。低キャップレートで購入した物件ほど、出口時の利回り上昇が売却価格に与える影響は大きい。
出口価格はNOIとキャップレートを分けて考える
例えば賃料改定や稼働率改善によってNOIが増加すれば、多少キャップレートが上昇しても価格を維持できる。一方、NOIが横ばいの物件では出口利回りの上昇がそのまま評価額低下につながりやすい。このため、2026年以降の出口戦略では「東京だから上がる」という地域ベースの判断より、保有期間中にどれだけNOIを増やせるかが重要になる。
融資期限も出口時期を決める重要な要素である。低い固定金利を長期間確保している案件は、急いで売却せず賃料上昇を取り込む選択肢がある。反対に、1~2年以内に大規模な借換を迎える案件では、金利上昇後のDSCRと新しいLTVを試算し、借換前の売却も比較すべきである。
海外投資家には為替という第二の出口価格がある
海外投資家の場合、円建て売却価格が上昇しても、自国通貨へ戻す時点の為替によって最終収益は変わる。したがって物件売却と為替転換を同じ日に行う必要はなく、円建て資金を一定期間保有する、段階的に外貨へ転換するなどの方法も含めて検討対象となる。
売却判断は三つの条件で管理する
現在の環境では、第一にNOI成長が止まった時、第二に借換後の金利が物件収益力に対して過大になった時、第三に市場価格が将来の収益改善を十分以上に織り込んだ時が、売却を検討する合理的なタイミングとなる。反対に賃料上昇余地が大きく、長期固定融資があり、売却市場の流動性も高い物件は保有継続に合理性がある。2026年秋の出口戦略は相場の天井を当てる作業ではなく、NOI、金利、キャップレート、為替の四変数を継続的に比較する資本管理へ移行している。