取引市場そのものは弱くない
2026年の日本不動産市場を単純な金利上昇相場として見ると実態を誤る。CBREによれば、第2四半期の事業用不動産投資額は前年同期比17%増の1兆1,210億円となり、第2四半期として金融危機後初めて1兆円を超えた。オフィスと物流施設では投資額が前年同期比2桁増となり、東京のプライムオフィスとホテルでは期待NOI利回りが過去最低を更新した。少なくとも優良資産に対する投資需要は依然強い。
しかし投資家心理の中身は変化している
現在の強さは、すべての不動産価格が同じ方向へ上昇するという意味ではない。日銀は政策金利を1.0%程度まで引き上げており、9月17-18日の会合を前に追加利上げ観測が強まっている。さらに円は対ドルで7カ月ぶりの高値圏まで上昇した。海外投資家にとっては取得時の為替メリットが縮小し、国内投資家にとっても借入コスト上昇がレバレッジ効果を低下させる。投資家は価格上昇そのものより、価格を支える収益成長を要求し始めている。
資金は「希少性+収益改善余地」へ向かう
CBREの調査では、2027年末までに期待利回りが上昇するとみる回答者の割合も以前より増えている。これは市場参加者が現在の低利回りを無条件に長期化すると考えていないことを示す。一方で、都心の優良オフィス、賃料改定余地のある住宅、需給の強いホテルなど、NOIを伸ばせる物件には競争が残る。今後の投資家心理を表現するなら「全面強気」ではなく「選別的強気」が適切である。
海外投資家には物件選別能力が一段と重要
円安だけを理由に日本市場へ参入する投資家には難しい環境になる一方、長期的な賃料成長、土地の希少性、再開発効果、安定した需要を分析できる投資家には機会が残る。逆に地方の低稼働資産、賃料上昇余地の乏しい物件、借換え依存度の高い案件では、表面利回りが高くても出口価格が弱くなる可能性がある。今後は取引総額より、キャップレート、賃料、融資条件、海外投資家の買越・売越動向を組み合わせてセンチメントを判断する必要がある。