円相場の主役が「介入警戒」から「金利差縮小」へ
外国為替市場では9月8日、円が一時1ドル=152.89円まで上昇し、2月以来およそ7カ月ぶりの高値を付けた。その後は153円台へ戻したものの、前週からの円上昇率は約5%に達した。背景には、9月17~18日の日銀金融政策決定会合を前にした追加利上げ観測、日本投資家による海外資産からの資金還流、円を調達通貨として利用してきたキャリートレードの巻き戻しがある。
日銀1%、次の焦点は1.25%への道筋
日銀は6月に政策金利を1.0%程度へ引き上げ、現在も無担保コール翌日物金利を1.0%程度で推移させる方針を維持している。さらに9月8日公表の2026年4~6月期GDP二次速報では実質GDPが前期比0.4%増となり、景気が急速な金融引き締めに耐えられないという見方を弱めた。市場では9月会合での追加利上げ期待が強まり、円相場は日米金利差が今後縮小するシナリオを先回りしている。
海外投資家には取得価格上昇、既存保有には評価益
日本不動産への影響は投資時点によって逆方向になる。ドルや人民元など外貨から新たに円へ交換して物件を取得する投資家には、円高は同じ円建て物件を購入するために必要な外貨額を増やす。円安局面で形成されていた日本資産の為替面での割安感は縮小する。一方、すでに円建て不動産を保有する海外投資家には、円高は売却価格や賃料収入を外貨へ換算した際の価値を押し上げる方向に働く。
キャリートレード解消は金融市場にも波及
今回の円高で重要なのは値幅だけではない。Reutersによれば、国境を越えた円借入残高は3月時点で約360兆円に達しており、円は世界的な資金調達通貨として大きな役割を担ってきた。急速な円高は円売りポジションの解消を誘発し、株式、債券、不動産ファンドなど広範なリスク資産の価格形成にも影響し得る。
次の分岐点は日米双方の金融政策
ただし円高を一方向のトレンドと断定する段階ではない。米国では8月雇用統計が予想を上回り、FRBの追加利上げ観測が再浮上している。米金利が上昇すれば日米金利差縮小は遅れ、ドル円が再び円安方向へ戻る余地がある。逆に日銀が追加利上げを実施し、その後の正常化継続を示せば、円資金調達コストの上昇と円高が同時進行する可能性がある。海外不動産投資家にとって9月は、物件価格だけではなく取得時の為替、借入条件、将来の売却通貨まで一体で評価すべき局面に入った。