出口価格を「円建て価格」だけで判断しない
2026年秋の海外投資家にとって重要なのは、日本不動産価格と為替を別々に見ないことである。円は9月8日に一時1ドル=152.89円まで上昇した。円安局面でドルなどの外貨を円転して取得した投資家の場合、物件価格が購入時から大きく上昇していなくても、売却代金を外貨へ戻す段階で円高がリターンを押し上げる可能性がある。したがって売却判断には円建てキャピタルゲインと為替損益の双方を含める必要がある。
プライム資産では価格環境も売り手に有利
CBREによれば、2026年第2四半期には東京のプライムオフィスとホテルの期待NOI利回りが前期比5bp低下し、過去最低を更新した。利回り低下は、他条件が同じなら資産価格の上昇要因となる。さらに国内事業用不動産の投資額は前年同期比17%増の1兆1,210億円で、買い手の資金が消失している状況ではない。円安時に取得し、運営改善によってNOIを伸ばした物件では、為替、NOI、キャップレートの三つが出口に有利に作用している可能性がある。
ただし「今すぐ売却」が全物件の正解ではない
反対材料は賃料成長である。現在の賃料が市場賃料を下回り、更新やテナント入替によってNOIをさらに引き上げられる物件では、早期売却によって将来価値を放棄することになる。また、売却後に円を外貨へ転換するタイミングでも為替は変動する。売買契約時の円相場だけで出口収益を固定的に考えるべきではなく、必要に応じて為替ヘッジを含む資金回収計画が必要になる。
2026年秋の出口判断は四つの数字で行う
実務上は、現在のNOI、今後2〜3年のNOI成長率、想定出口キャップレート、外貨換算時の為替レートを複数シナリオで比較するべきである。さらに借入がある場合は、保有継続時の借換え金利を加える。金利上昇によって将来の買い手の借入余力が低下すれば、NOIが増えてもキャップレート上昇によって価格が相殺される可能性がある。円安で買い、賃料を改善し、円高と低キャップレートが重なった資産については、2026年秋は利益確定を具体的に検討する合理性が高い。一方、収益成長がまだ初期段階の資産は保有継続が優位となり得る。出口戦略は市場全体ではなく、物件ごとに分けるべき局面である。