9月9日の日本不動産投資環境で最大の変化は円である。USD/JPYは9月8日に一時152.89円まで低下し、2月以来の円高水準となった。その後は153.81円前後まで戻したが、直前の160円近辺からみれば急激な修正である。中国人民元についても、USD/CNYが6.7106前後であることから1人民元は約22.92円となり、人民元投資家にとっても日本不動産の取得価格は円安ピーク時より上昇している。
背景は日銀の追加利上げ観測だ。日本経済の4~6月期GDP改定値は前期比0.4%増、年率1.4%増となり、7月の実質賃金も前年同月比2.4%増加した。市場では9月17~18日の金融政策決定会合で政策金利が現行1.00%から1.25%へ引き上げられるとの見方が強まっている。円キャリートレードの巻き戻しも加わり、為替は従来より大きく動きやすい。
不動産には金利上昇という逆風がある。日本10年国債利回りは9月8日時点で2.907%で、直近には3%を超える場面もあった。CBREが示す大手町プライムオフィスの期待NOI利回りは3.10%しかなく、単純な利回り差は極めて小さい。このため、低利回りの物件を「さらに価格が上がる」という前提だけで購入する戦略は危険度が高まった。
一方で、東京の賃貸市場はこの金利上昇を吸収するだけの強さを見せている。Q2の全グレード空室率は1.4%、主要5区は1.0%。全グレードの想定成約賃料は坪24,930円で前年比11.7%上昇した。Q2の日本事業用不動産投資額も1兆1,210億円と前年比17%増えており、資金流入が止まったわけではない。
したがって本日の判断は「為替だけなら買い急がない、不動産収益が伸びる案件なら継続検討」である。特に海外投資家は、円が再び160円へ戻ることを前提にせず、150円前後でも投資採算が取れる取得価格を設定したい。今後1週間の最大イベントは日銀会合ではなく、その前段階で市場がどこまで利上げを織り込み、USD/JPYと10年金利が動くかである。都心で賃料改定余地のある物件は依然有望だが、高レバレッジ・低利回り案件には一段の慎重さが必要である。