今週の出発点は「強い不動産、難しい価格判断」
9月7日時点で日本不動産市場のファンダメンタルズは総じて底堅い。CBREによると2026年第2四半期の事業用不動産投資額は前年同期比17%増の1兆1,210億円となり、東京オフィスではオールグレード空室率が1.4%まで低下した。グレードA賃料は前期比4.3%上昇し、主要な賃貸市場では物件所有者が賃料を引き上げやすい環境が続いている。これは保有期間中のNOI成長を重視する投資家にとって明確な支援材料である。
ただしプライム価格には余裕が少ない
ファンダメンタルズが強いからこそ価格も上昇している。第2四半期の東京・大手町プライムオフィス期待NOI利回りは3.10%、主要5区ホテルは4.15%となり、いずれも過去最低を更新した。金利が低位で安定していれば低い不動産利回りも吸収できるが、今後の金利上昇を想定すると、投資家は賃料成長でどこまで金利上昇を相殺できるかを計算する必要がある。現在の東京市場では立地だけでなく、賃料改定余地、テナント構成、設備競争力が価格防衛力を左右する。
ホテル需要は高水準だが直線的ではない
インバウンドはホテルや都心商業施設の重要な需要源である。JNTOによると2026年7月の訪日外客数は344万2,100人で前年同月比0.1%増となり、7月として過去最高だった。一方、6月は前年同月比6.8%減だったため、月次の振れを無視して需要が一直線に拡大すると想定するのは適切ではない。ホテル投資では客室単価だけでなく、稼働率、国籍別需要、運営費、人件費を含む収益構造を確認する必要がある。
9月8日のGDP改定値が次の焦点
内閣府は2026年4~6月期GDPの2次速報を9月8日午前8時50分に公表する予定である。1次速報では民間最終消費支出が実質で前期比ほぼ横ばいとなっており、国内需要の強さにはなお確認が必要だ。GDP改定が景気認識や金利見通しを変えれば、不動産の割引率、借入条件、J-REIT評価にも波及し得る。このため今週は、不動産固有の強い需給とマクロ経済の温度差をどう評価するかが中心テーマとなる。
海外投資家の週間判断
海外投資家にとって、日本は流動性、賃料成長、観光需要という複数の支援材料を持つ一方、取得利回りはすでに低い。したがって今週の判断は全面的な強気・弱気ではなく、収益成長が価格に追いつく物件を探すことが合理的である。GDP、金利観測、為替、賃料の4要素を同時に確認し、特に3~5年後の売却価格を現在と同じ低利回りで固定して収支計算しないことが重要になる。