2026年の日本市場は現時点では高い売却流動性を持つ
出口戦略の第一条件は、売りたい時に十分な買い手が存在するかである。この点で2026年の日本不動産市場は依然として強い。CBREによると、2026年Q1の事業用不動産投資額は前年同期比2%増の2兆430億円となり、第1四半期として過去最高を記録した。Q2も前年同期比17%増の1兆1,210億円となり、第2四半期として2008年以来初めて1兆円を上回った。大型取引を吸収できる資金が継続的に存在していることは、保有資産の売却可能性にとって明確なプラス材料である。
国内外の多層的な買い手が出口を支える
現在の買い手は海外機関投資家、国内不動産会社、私募ファンド、保険会社、J-REIT、個人・事業法人など多層化している。さらに東京はCBREの調査で7年連続してアジア太平洋のクロスボーダー不動産投資先首位となった。都心オフィス、ホテル、物流、賃貸住宅など、収益実績が明確で市場規模の大きい資産は国内だけでなく海外資金にも出口を求めやすい。買い手の母集団が広いこと自体が流動性プレミアムとなる。
ただし今の低い出口利回りを3~5年後に置くのは危険
出口モデルで避けるべきなのは、現在の記録的に低いキャップレートが将来も維持されると仮定することである。2026年Q2のJ-REIT取得額はQ1比78%減少した。またCBREの投資家調査では、2027年末までに期待利回りが上昇すると予想する回答者が前年調査より増えている。日本の長期金利や銀行借入金利が上昇すれば、次の買い手が利用できるレバレッジは低下し、同じNOIに対して支払える価格も下がる可能性がある。
取得時に最低3種類の買い手を想定する
海外投資家は購入時点から「最終的に誰へ売れるか」を具体化する必要がある。大型オフィス・物流施設なら国内外ファンドやREIT、賃貸住宅なら私募ファンド、不動産会社、富裕層投資家、区分マンションなら実需層と個人投資家など、複数の出口候補を持つ物件ほど市況変化に強い。反対に特殊用途物件、極端に大型な案件、特定テナントへの依存度が高い物件などは、平時には高収益でも市場悪化時に買い手が急減する可能性がある。
出口価格はNOI成長とキャップレートを別々にストレステストする
売却価格は概念的にはNOIと出口キャップレートの組み合わせで決まるため、両方を同時に楽観視するべきではない。賃料改定、空室改善、ホテル運営改善、修繕・用途変更などでNOIを増やせれば、将来キャップレートが多少上昇しても価格への打撃を緩和できる。外貨ベースの投資家はさらに取得時と売却時の為替を加える必要がある。2026年後半は出口市場が強いからこそ、3~5年後にはより高い出口利回りを置き、それでも投資採算が成立する物件を選ぶことが合理的である。